インド洋上補給の海自艦、米が戦術指揮
 昨年来、海幕チーム容認

                 朝日新聞2002.06.16東京朝刊1頁


 防衛庁海上幕僚監部の派遣チームが昨年11月、バーレーンの米中央軍第5艦隊司令部で当時のムーア司令官に会い、インド洋での対テロ戦争の補給作戦で海上自衛艦が米海軍の「戦術指揮統制」下に入ることを容認していた。複数の日本政府関係者が明らかにした。(3面に関係記事

 自衛隊を他国の指揮統制に委ねることは、海外での武力行使と並び、政府の憲法解釈によって禁じられている集団的自衛権行使に直結する。政府はテロ対策特措法の国会審議で「直接、他国から指揮命令を受けないよう、我が国が主体的に行動する」(中谷防衛庁長官)と答弁しており、整合性が問われそうだ。

 「戦術指揮統制」は部隊を現場で具体的、局地的に動かす権限のこと。任務の内容や目的、部隊の編成といった大枠についての権限である「作戦指揮統制」の下に位置づけられ、その枠内で臨機の対応もできる。

 派遣チームは海幕防衛班長(1佐)以下、自衛艦隊司令部の主任幕僚らで構成。海自艦が洋上補給を開始する1週間前の11月25日、ペルシャ湾内のバーレーン基地でムーア司令官に会った。

 関係者によると司令官は、海自艦は独自に活動するのか、多国籍軍に統合されて活動するのかと質問。派遣チームは、作戦指揮統制については「独自に維持することが必要だ」と答えたが、戦術指揮統制については「洋上補給を行う期間、第5艦隊53任務群司令官(後方支援担当)に委ねることは可能ではないかと考える」と応じた。

 そのうえで「ただし戦術指揮統制を米海軍に委ねることは政治的に公言できないため、微妙な配慮が必要だ」と付け加えた。

 司令官はバーレーン基地にある友軍調整センター棟に海自の連絡将校用の部屋を設置するよう勧めた。海自は、米国との集団的自衛権行使を掲げた北大西洋条約機構(NATO)諸国と並んで連絡将校室を開設。昨年末から将校を送った。

 これに関連して米軍事筋は、海自艦が洋上補給にあたり実際に53任務群司令官の戦術指揮統制下に入っていることを認めた。いつどこでどの艦に補給するかは、各艦の燃料の残り具合や位置などをグローバルに管理して割り出しており、今回の作戦では同司令官が指揮統制に当たる。同司令官が15日先までの補給日程を海自側に示し、承認を得たうえで、具体的任務に従事する間は戦術指揮統制下に組み込んでいると説明している。

 防衛庁内局幹部は「(バーレーンでの協議について)海幕からそんな報告はきていない。事実関係を確かめないと何とも言えない」と語った。

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