【防衛庁交渉 2002年5月24日】
防衛庁交渉団
防衛庁側
開始・終了時刻 午後2時_3時10分
冒頭、氏名を明らかにするよう求める要請団側と防衛庁側との間で「個人として対応するわけではないので、役職(を明らかにする)だけでいいでしょう」(防衛庁)「中谷長官の代理なのだから責任を持って対応してほしい」(要請団)などのやり取りがあった。
質問・要望
シビリアンコントロールの確保・徹底を求めます。
自衛隊に対するシビリアンコントロールは厳格に守らなければなりませんが、実質それが破られているような事態が見受けられます。防衛庁は昨年、テロ特措法審議の中で、川田衆議院議員の「海外で展開中の部隊への支援策として、民間業者への派遣要請を考えているのか」の質問に対し、「現時点では考えていない」と全面的に否定しながら、すでにその1ヶ月以上前に、石川島播磨重工業など、10数社に対する要請作業に着手していたことが報道されています。ほか様々、危惧される動きがあります。こうした事態に対する見解、法的根拠を質すと同時に、シビリアンコントロールの確保・徹底を求めます。
【回答】 防衛庁として企業に対し「艦船に不具合が生じた場合、修理をお願いすることがある」旨、通告はしている。しかし、修理すべき不具合が発生していないので、具体的に現場に行っていただくことは考えていない。
憲法違反の有事関連3法案の撤回を求めます。
政府は周辺事態法の説明で、「周辺とは、地理的概念ではない」としながらも、「インド洋は想定していない」と答弁しました。しかし昨年のテロ特措法では、海上航空自衛隊のインド洋派遣を実行しました。今度の有事法制では「武力攻撃事態」とその「おそれ」「予測」が加わりました。
中谷防衛庁長官は国会で、「船舶に対して組織的・計画的な攻撃が発生する場合においては、自衛権の発動になる」と答弁され、インド洋上の自衛隊船舶に対する攻撃は、自衛権の発動との認識を示されました。中谷防衛庁長官の見解は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規程した憲法と明らかに違反すると考えますが、見解をお聞かせ願います。
また、憲法違反の3法案の撤回を求めます。あわせて自衛隊のインド洋からの撤退を求めます。
【回答】 憲法違反との指摘だが、独立国家には自衛権は認められており、日本も自衛権は放棄していない。政府としては、その考えの下で有事法制を進めている。武力攻撃事態法は、国全体として危機管理の体制を整備するものだ。
追加質疑
【質問】 修理は誰が行うのか。
【回答】 艦船の修理は隊員が行う。隊員が処理できない場合、企業に電話で問い合わせる。それでも直らない場合、技術者の派遣を求める。
企業に対しては「依頼する場合がある」という通知をした。必ずしも危ない所での修理を民間業者に依頼するものではない。「危ない所には行きたくない」と業者が言えば、契約は結べない。ただ、安全な場所まで自衛艦を曳航して修理を依頼することが将来全くないとは言えない。安全な場所で作業していただくのは当然だ。全く将来的に修理の所要が生じた時にお願いしないということではない。
【質問】 契約はしているのか。
【回答】 していない。
【質問】 国家緊急権について憲法に規定はあるか。
【回答】 規定はない。だが、よその国が攻めてきた時になされるままでいいということはない。よその国が武力攻撃してきた時には、明確な明示的文言はないが、自衛の権利は解釈上ある。「自衛権はある」というのが法制局の見解だ。集団的自衛権については、独立国家にはあるが、行使はしないことになっている。
【質問】 ミサイルが発射されそうな場合は先制攻撃するのか。
【回答】 飛んでくるミサイルを防ぐという観点もあるが、国全体として危機管理の体制を整えようというのが武力攻撃事態法だ。ミサイルに燃料が注入されている場合、発射までには空き時間がある。ぎりぎりまで外交交渉はする。しかし、燃料注入は「武力攻撃予測事態」と認定できる。
【質問】 日本に飛んでくるとは限らないではないか。
【回答】 情報などから、相手国の意図やその時その時の状況など、いろんな要素を考えて判断する。ミサイルに燃料を注入している相手国が明らかに日本を狙っていることが情報収集によって認められる場合は「予測事態」となる。座して死を待つべきではないという答弁もある。ミサイルを落とされても黙っているのか。
【質問】 朝日新聞が報じたイージス艦派遣要請問題について伺いたい。ここにその記事があるが、ショッキングな内容だ。この件に関し、5月7日の有事法制特別委員会で民主党の岡田克也議員が問い質した。しかし、小泉総理も中谷防衛庁長官も「朝日の報道は事実ではない」と否定された。特に中谷長官は、「朝日に申し入れをしている」と強く反論された。私たちは事実確認のため、朝日に交渉した。朝日からは、事実であるとの承認文書をとっている。これがそうだ。この件に関する防衛庁の見解を伺いたい。実際はどうなのか。
【回答】 運用局でないとお答えできない。ここには答えられる者がいない。
【質問】 なぜ答えられないのか。これは私たち国民が日本政府を信じられるかどうかの問題だ。誠実に対応していただきたい。
【回答】 部署が違う。担当部署ではないので、答えられない。
【質問】 これは非常に大事な問題。私たちの申上げている事柄の趣旨は分かるのか。
【回答】 ・・・。
【質問】 分からないのか?分からなければ貴重な時間を割いてお話し申上げても時間の無駄。いかがか。お答えいただきたい。
【回答】 日本語としては分かる。
【質問】 では、この件について、きちんとした回答をお願いする。この資料一式、コピーを取っていただきたい。(防衛庁コピーを取る)
【回答】 (いただいた資料は)報道室に渡す。担当部署に回す。オペレーション(作戦等)の話は担当課以外にはなかなか来ない。(あらかじめ送られた)質問の趣旨は石播に関することだけだった。いただいた資料に基づいて調整し、答えられる者を探す。
【質問】 では次回、ご回答願いたい。
【回答】 回答するとは言っていない。報道室に(資料を)渡す。
【質問】 回答していただかかなければ、決着が着かない。いつ頃までにお返事がいただけるか?
【回答】 それは言えない。答えられるように努力はするが、いつとは言えない。
【質問】 だらだらと引き延ばされても困る。もう一度、文書提出が必要か?
【回答】 必要ない。
【質問】 今月中に返答してほしい。こちらに伺えばよいのか?
【回答】 そういうふうにはしない。討論会をしたりすることは考えていない。
【質問】 では電話をいただきたい。必ず今月中に。
【回答】 努力する。
【交渉団要望】 7歳の孫が中谷長官に手紙を書いた。先日、ロビイングしたときの長官宛ての要望書も持っている。長官にお渡し願いたい。
防衛庁側は躊躇しながらも受け取る。しかし、しばらくして手紙を掲げ、こう言った。
【防衛庁】この手紙、大丈夫でしょうね。
【交渉団】どういう意味でしょうか?
【防衛庁】白い粉が入っているとか?
【交渉団】ではここで開けてください。どうぞ。
【防衛庁】いや、いいです。渡します。
【交渉団】いえ、開けましょう。
【防衛庁】いえ。いいです。
【交渉団】では私が開けましょう。本人の許可を得ていますから。お貸しください。
防衛庁、やむを得ず渡す。開封した手紙を開き、
【交渉団】では、ここで読み上げましょう。(防衛庁は逆らえない。交渉団は読み上げる)
中谷ぼうえい庁長官さま
せんそうはいやです。日本がせんそうをしないようにしてください。わたしたちはせかいじゅうのみんなとなかよくしたいです。
氏名 〇〇 〇〇 7さい。
会議室は水を打ったように静まり返った。読みを終えた手紙を受け取った担当官は、「お預かりします」と、さすがに神妙な面持ち。このときの交渉が5月30日の電話連絡となり、その後の追及交渉につながる。
以上
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