「有事法制関連三法案」成立に反対し,政府に同法の撤回を求める要請書
衆議院議員各位様
常日頃から、わが国の発展と国民の平和、安全のために心血を注ぎ、奮闘されていることとご推察申し上げ、感謝の念を捧げます。どうぞこれからも、益々奮起されて、わが国が国際社会の中で果たすべき役割をつつがなく果たせますよう、ご努力下さいませ。
さて,今回私どもが本文書を差し上げますのは、わが国を形成する一市民として、現在政府が今国会において成立を目指している「有事法制関連三法案」(武力攻撃事態法案 安全保障会議設置法改正案 自衛隊法改正案)に関し、大いなる危機感を抱いているからです。この法案はわが国が戦後営々として築き上げてきた不戦の誓いと,平和への努力を根底から覆し、わが国の未来を戦争へと導く、誠に由々しき問題を含んだ悪法だと思うからです。
小泉首相の掲げる「備えあれば憂いなし」の法案の中味はあくまでも、わが国が諸外国から直接的な攻撃を受けた場合のみを想定して立案されたのものではなく、いわゆる他国への介入型戦争であり、アメリカの行う、アメリカ独自の戦争にも日本が積極的に参加することができるという、これまでの自衛隊法及び、わが国の憲法9条からは考えられない“戦争のできる国への脱皮法案”でもあるのです。
小泉首相はなぜ今,わが国の命運を左右するこのような重要法案を、かくも拙速に成立させようとしているのでしょうか。与党議員の方々の見解は、自民・社会の55年体制が崩れた93年から研究グループが発足し、99年から本格的な研究を重ねてきたのだから、決して拙速ではない。十分考慮した結果だと述べておられます。
しかし、私どもが衆議院有事法制特別委員会での審議を傍聴する限りにおいて、十分練られたものだとは思えません。野党議員の質問に政府が答弁に窮し、審議が中断したり、答弁が曖昧だったりする場面がしばしば見られ、決して十分な検討が加えられ、今国会に上程されたとは思えないのです。私たち国民の側からすれば、この法案は昨年のニューヨークにおける9,11事件が引き金になり、「テロ対策特措法」の制定を経、今回の「有事法制」立法化への道を開いたと認識せざるをえません。
その根拠としては、外務省職員の捏造と報じられた例の「ショウザ・フラッグ」。そして今回の有事法制立法化においては、日本が99年に制定した周辺事態法の中に“自治体や民間の強制動員条項”が盛り込まれなかったことに対するアメリカの不満に、日本政府が応えた結果だとの見方があり、私たちもそのように解釈しています。
これはかつて、アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引くと揶揄されたように,同盟国という立場から、常にアメリカの顔色を窺いながら、日本の国策を立ててきた過去の経緯を未だに引きずっている証拠ではないかと思います。私たちは日本が、世界に誇る平和憲法を保持する立憲国でありながら、日本独自の主体性を貫き通せないわが国の政治姿勢に無念の思いを禁じえません。
私たちは政府に申し上げたい。日本はアメリカの国策に追随することなく、わが国本来の国策を推進して頂きたいと。小泉首相も認めているように、ここ数年、いやこれから先々も、日本が憲法9条を遵守し,平和主義を貫くならば、わが国は諸外国から武力攻撃を受ける可能性はないと、私たちは確信します。
小泉首相は国会審議の過程で、国民の生命・財産を守るのが「政治の要諦」とし、平和な時にこそ有事に備え、立法化すべしと力説されていますが、果たしてその見解が適切な判断といえるのでしょうか。軍備を布くということを分かりやすく説明すれば、これは「戦う意志の表明」であり、いつでも私たちの国に攻めてきていいですよという“お墨付き”を国際社会に与えることになるのです。
つまりこれにより、日本国民はいつ、なんどき他国のからの攻撃に晒されるかわからないという緊張状態に置かれ,一旦事が起きればすべての国民が生命・財産の危機に直面することになるのです。いわば、この法案はあえて危険をおびき寄せる政策であるということにもなります。それを承知の上で「政治の要諦」を持ち出す小泉首相の意図たるや明々白々たるものがあるといわざるをえません。つまり国民への目くらましです。有事に対する混乱を防ぎ、国民の生命・財産を守るとしながら、実質、この法案には、有事における国民の自由と権利の保障については明らかにされていません。情報の開示についての規定もありません。反面、すべての国民には協力義務が課せられ、土地・家屋の提供はもちろんのこと、自衛隊が使用する物資の保管や提出、医療・土木従事者の労動力等の提供及び、エネルギー関係等への協力義務など、国民生活の全分野に亘り、罰則付きの強制力が働くことになっています。さらに福田官房長官は、「国民の自由と権利」の制限対象についても、「言論及び、集会の自由」まで含むとの見解を示しています。
いま日本各地では、憲法9条の精神を踏みにじり、かつての国家総動員法に順ずる「有事法制三法案」の立法化に反対する国民の声が日増しに強まっています。また地方都市の首長・県知事・町村議会等が疑問や不賛成の意志表示や反対の決議などを挙げています。
京都府大山埼町議会は5月8日に開いた臨時議会で、小泉首相宛ての「有事法制三法案に反対する決議」を賛成多数で可決(朝日新聞5月10日付け朝刊掲載)しました。この法案がまさしく世界の平和と日本の未来を念頭に、国民ひとり一人の人権や生命・財産を守るという観点に立つならば、国民はこぞってこの法案成立を支持し、現政権をバックアップするでしょう。
しかしこの法案は,これまで述べてきたように、さまざまな問題点を含んでいます。中央集権的な要素が非常に強く、有事における総理の権限は絶大で、地方自治体への支配権・協力義務、あるいは総理の強制執行権等、政府と地方自治体との均衡関係をも破壊し、上下関係を固定化させるという、地方自治法の根幹をも揺るがしかねない法案でもあるのです。
これらは現在国策として推進中の地方分権政策の対極にあり、地方自治法に定められた「地方公共団体の自主性及び、自立性が十分に発揮されろようにしなければならない」とする規定にも,真っ向から対立する法案です。私たちは各地方自治体の平和政策及び、独自性の尊重、さらには国民一人ひとりの思想・信条にまで国家が大きく関与し,強制力を強めてくる本法案の成立には勇気をもって反対を唱え、政府に同法の撤回を強く求めます。
NO!有事立法23区ネット 代表
添付資料
「有事法制3法案に反対する決議」
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