東京23区自治体公開質問書


                     2002年9月6日

東京23区自治体公開質問書

  区長    様

             提出者
             NO!有事立法23区ネット代表
                           伊藤 瀧子
                             連絡先 略 

まえがき

貴自治体におかれましては、常日頃から内外の平和および、地域の住民福祉にご努力頂き、ありがとうございます。そうした職責上のお立場からいえば、本年4月からわが国の国策として浮上いたしました「有事法制関連3法案」の行方に対しましては、種々ご心労のことと存じます。私どもといたしましても、今の日本に「有事法制」は要らないという立場で同法の廃案、あるいは政府に慎重審議を求める陳情・要請等を行ってきた経緯がございます。

こうしたなかで全国500を超す自治体要請等が政府に提出され、国民の反対運動ともあいまって、同法成立はー旦中断いたしましたものの、政府は横断的な作業チームを立ち上げ、国民保護法制など、新たな分野の調整に乗り出し、秋の臨時国会で成立を目指しているという状況にあります。そこで私どもは各自治体に以下の質問書を提出し、改めて本法案に対するご意見を伺いたく、本文書を提出させて頂きます。お手数ではございますが、全項目に亘り、十分に吟味されて、しかるべき回答をお示し下さいますよう、お願いいたします。どうぞご協力下さいませ。

質問

1.「国民保護法制」について

・「国民保護法制」とは、どういう法律なのか、ご存知ですか。具体的にお答えください。

・「国民保護法制」が住民を守るために制度化されるものだと認識されていますか。具体的にお答えください。

・ また実際、有事の際に、住民は守られるとお考えでしょうか?明確にお答えください。

・ 「国民保護法制」に対する片山総務大臣の発言をご存知でしょうか?具体的にお答えください。

2.国民の避難・誘導に関する事例について。

99年に発生した茨城県東海村の臨界事故の際、地域住民には、外に出るな、家の中にいろとの命令が下った。原子力事故の場合、なるべく遠くへ逃げるべきなのに、そういう指示は与えなかった。なぜか。国民はパニックを引き起こすものだとの前提に立ち、混乱を生じさせないために、家の中に閉じ込めた。被爆しても構わない。とにかく外に出られては困る。有事のとき、国民を羊の群れのように、いかにおとなしく、粛々と移動させるかが、国の方針。自衛隊法に詳しい、ある軍事専門家の話です。また、かつての沖縄戦では、住民は軍隊によって、楯にされたり、殺戮(さつりく)されました。こういう事例に対して、どう思われますか。国民は守られる対象と判断されますか。明確にお答えください。

3. 「有事法制関連3法案」の成立は絶対必要か? 

いま政府は、今後の有事法成立を目指し、法案の練り直しを進めているところですが、貴自治体は、今の日本に有事法の成立が絶対必要だとお考えでしょうか。私たちは、日本の有事法制定は、現在の国際情勢に逆行する、まことに愚かな行為だと判断しています。理由は、武力攻撃事態法からいっても、すでに説得力を失っていると言わざるを得ません。

なにしろ、北の脅威といわれた北朝鮮は、日朝の歴史上、初つといわれる両首脳会談を受け入れ、小泉首相との会談準備を進めています。背後に米国の悪の枢軸論に対する反発や、経済的事情等はあるにしても、日本との国交の正常化を図ろうとの姿勢が如実に打ち出されてきたと見て差し支えないでしょう。小泉総理にしても、自らの判断で首脳会談を求めた以上、日朝の友好姿勢を具体的に示さない限り、会談自体の意味がありません。金主席と折衝するー方で、武力攻撃事態法をメインにした有事法制関連3法案を成立させようなどとは、まさにナンセンス。日本が本気で北朝鮮はじめ、アジア諸国との共存共栄を目指すならば、有事法制成立は潔く撤回すべきだと考えますが、貴自治体はいかがお考えですか。明確にお答えください。

4. 住基ネットの稼動について

本年8月5日、全国的に稼動し始めた住基ネットは、元々国民総背番号制といわれるもので、国家による国民総監視・ー元管理を目指す強権制度です。この制度は有事法制関連3法案とー体化するもので、国民は国家による戦争体制づくりに全面協力させられるシステムです。全ての国民には11桁の住民票コード番号が割り当てられ、本人の住所・氏名・性別・生年月日等の個人情報が地方自治情報センターでー元的に管理され、2003年8月にはICチップ内蔵の住基カードが交付され、日常生活における個人情報がカードの使用により、逐次記録され、反戦運動や反権力等に対する監視・抑圧に結び付いたり、更なる予測としては、徴兵制への布石ではないかとの懸念すら高まっています。そこでお尋ねいたします。

・国家が莫大な財源を投入し、稼動させる住基ネットの大義名文は、住民票の移動に関し、全国どこでも簡単に手続きが行えるという、まことに些細なサービス分野の利便性だけだと、自治体職員まで認めている、極めて納得しがたい内容です。わずかこれだけの利便性のために、個人のプライバシーまで侵害するシステムに対して、貴自治体は納得されていますか。十分に考慮されてお答えください。

・ 住基ネットの稼動直後、防衛庁の情報流失が大きく報じられましたが、管理が徹底しているはずの防衛庁でさえこの有様。住基ネットの担当者は全国で何万人単位。間違いが起こりえないとする確証はありますか。お答えください。

・仮に確証はないと答えられた自治体は、個人情報が流失した場合、当該者にどう対応されますか。明確にお答えください。

・ 今回の住基ネット稼動に対し、全国で6自治体の不参加があります。自治体の長自身の認識や、プライバシーを侵害されることに対する国民・住民の不安等、相当な反発があるからです。しかし、本件は有事法制関連3法案の影に隠れ、稼動直前に浮上した経緯があり、国民の住基ネット離脱要請はまだ、十分な反対運動には至っていません。貴自治体は今後、地域住民が住基ネット離脱の要請を行ったり、署名運動を起したりした場合、どのように対応されますか。責任ある回答を求めます。

5.核兵器問題と、無防備地域宣言について。

米国務総省は8月15日、2002年国防報告を明らかにしました。内容は武力攻 撃に対する国際法を踏みにじり、テロ対策に名を借りた無頼戦争の推進を正当化しようというものです。イラク・イラン・北朝鮮を悪の枢軸と挑発し、核兵器使用も辞さないとする構え。日本には57年前の被爆経験があります。

 今年の夏、伊藤一長長崎市長は核兵器による悲惨さを述べ、米政府がロシアと交わした弾道弾迎撃ミサイル制限条約を一方的に破棄し、ミサイル防衛計画を進め、さらに、包括的核実験禁止条約の批准を拒否し、水爆の起爆装置の製造再開および、新しい世代の小型核兵器の開発、核による先制攻撃などの可能性を表明しているとして、危機感を募らせています。

・核兵器の使用は人類の滅亡に繋がりかねません。日本は過去の経験から非核三原則の法制化に着手し、加えて国際社会における核の開発・不保持の先陣に立つべきと考えますが、貴自治体のご見解をお示しください。

・また政府にそのような要請を行う方針があるのかないのか、率直にお答えください。

 米政府のテロ対策は近い将来、イラク攻撃を具体化する方向で方針を固め、8月27〜28両日に来日したアーミテージ米国務副長官は、日本政府への参戦協力を求めています。日本側としては、イラク政府のテロに関する位置付けが明確にならない限り、現在のテロ特措法での協力は基本的に無理な状況下にあり、有事法制関連3法案の成立はそうした制約を取り払い、戦争を解禁し、自衛隊にフリーハンドを与える重大な問題を孕んでいます。そこで私たちは申し入れを行います。

今後いかなる戦争協力・戦争被害も蒙りたくない。これらに関連するすべてを拒否するため、ジュネーブ条約第1追加議定書第59条に基く「無防備地域宣言」(注)を前向きに検討していただきたい。ただし日本は同条約に批准していません。しかし貴自治体が同条約を活用して戦争には加担しませんと宣言し、それに倣う自治体が増えれば、日本は戦争ができなくなります。

 ・私たちは罪もない一般市民を巻き添えにしても省みないアメリカの独善的な戦争に加担することなど、絶対拒否する姿勢を貫く覚悟です。貴自治体はアメリカ・バークリー市の精神に倣い、区民の良心と平和を希求する精神を尊重し、不戦の誓いを新たにし、「無防備地域宣言」を前向きにご検討下さることを要望いたします。なお「無防備地域宣言」に関する資料等の提供は私どもで対応させていただく所存でございます。私どもの本要望に対し、貴自治体はどのように対応されるのか、責任あるご回答を望みます。

                              以上

(注)「無防備地域」とは、一般住民保護の観点から軍事攻撃を行うことを絶対的に禁止する地域で、ここを攻撃することは戦争犯罪になります。

なお、この回答は9月25日を期限にご記載下さいませ。担当者が電話連絡の上、直接受け取りに参ります。

付記
本質問書は公開を前提とし、後日集約の上、各自治体にご送付させて頂きます。また追ってNO!有事立法23区ネットのHP上で公開させて頂くことをあらかじめ申し添えます。どうぞご了承くださいませ。ご公務ご多忙の折、お手数をおかけいたしますが、よろしくお願い申上げます。

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