<「イージス艦派遣要請」に関する防衛庁とのやりとり>


防衛庁より電話連絡
日時 2002年5月30日 午後4時30分頃から、約10分余
担当部署 氏名:防衛庁広報課 海和 干城(カイワ タテキ)氏

会話のあらまし

海和「防衛庁広報課の者です。先日伊藤さんより、イージス艦の件で質問状を頂いていました。その件でお電話を差し上げました。お尋ねのイージス艦の件は事実ではありません。」

伊藤「では『朝日』が嘘をついたとおっしゃるのですか?」

海和「そうです」

伊藤「それはおかしいですね。朝日は、“記事は十分な取材に基づいて掲載した”と、事実であることを認め、私どもに公文書を渡してくれましたから」。

海和「でも事実ではありません。本人にも確かめています」

伊藤「本人とは誰ですか?」

海和「新聞に出でいる海幕本人です」

伊藤「困りましたねえ。双方の言い分が真っ向から対立しては。私たちはどちらを信じればいいんですか。この記事を書いた記者は身体を張って取材したと思うんですけど・・・」

海和「もちろん身体を張っていますね」

伊藤「それでも事実ではないとおっしゃるのですか?」

海和「そうです」

伊藤「朝日の方からは防衛庁に、あの記事は事実に基いて報道したものであるという、申し入れがありましたか」

海和「はい。ありました。」

伊藤「内容はどういう風になっていますか?」

海和「そういうことには答えられません」

伊藤「それでは、防衛庁はどのように対処されましたか?」

海和「文書を送りました」

伊藤「内容はどんな風に?」

海和「その文書はありません」

伊藤「送られたのなら、控えはありますでしょ」

海和「・・・」

伊藤「あるはずですよね」

海和「・・・。それではちょっとお待ちください」。海和氏は受話器を置き、文書の確認をする。間もなく応答。

海和「事実ではないという文書です」

伊藤「では、私にその文書を確認させてください」

海和「いや、その文書はありません」

伊藤「でも、あなたはいま、私を待たせて確認したばかりでしょ。ないはずがありません。FAX送信してください」

海和「そういう文書はお送りできません。伊藤さんのお尋ねになりたいことは、イージス艦の件が事実かどうかということだけでしたね」

伊藤「いいえ、違います。私どもがお尋ねしたい肝心の点は、シビリアンコントロールの問題です。これは軍隊が政治に関与してはいけないという、憲法の原点に関わる問題です。しかし、今回の申し入れ書(5月24日付け文書は高瀬作成 別件中心)は私が作成したものではないので、要点(イージス艦派遣要請問題)が曖昧になっていました。ですから、24日の申し入れの際、答弁のできる担当者がここにはいないということで、やむを得ず、保留にしたわけです。これから改めて申し入れようと思っています」

海和「そうですか」

伊藤「とにかく、自衛隊の文民統制はいけません。憲法違反です」

海和「・・・」

伊藤「しかし自衛隊の法整備は必要ですね。5年前の阪神大震災のとき、自衛隊が臨機応変、迅速に動ける法律がないため、目の前で人が下敷きになっていても、救出できないなどという矛盾が指摘されました」

海和「そうです」

伊藤「そういう意味では、日本国内における天変地異を対象にした法の整備は必要です」

海和「・・・」

伊藤「しかし、いまの有事法制案はいけません。日本を戦争のできる国にしょうとする法案です。成立すればアジア諸国との緊張関係が生じます」

海和「・・・」

伊藤「戦後56年、日本は侵略戦争の経験を踏まえ、2度と戦争はしないと不戦の誓いを新たにしてきました。日本がアジア諸国の人々に対して行った人権侵害等、いちいち申し上げませんが、歴代首相が政権交代する度に、深く反省し、再び戦争は起こしませんと、誓ってきました。私たちも同じです。そういう努力が水の泡になります」。

海和「憲法については、伊藤さんとは考え方が違います」

伊藤「いずれにしても自衛隊の文民統制は憲法違反です。改めて質問状を提出します」

海和「文書の提出は、文書課の田中さんに連絡してください」

伊藤、「文書課の田中さんですね」私はメモを執る。

海和「はいそうです」

伊藤「ところで、中谷防衛庁長官にお目にかかることはできないのでしょうか? 中谷長官と私は同郷です。高知県の出身です。ぜひ一度お目にかかりたいと思っているのですが、防衛庁にはいらっしゃいませんか?」

海和「国会のある日はいませんが、ない日はいます」

伊藤「なんとかお目にかからせて頂けないでしょうか」

海和「それも、文書課の田中さんに相談してください」

伊藤「分かりました。最後にお電話下さったあなたのお名前をお聞かせください」

海和「名前を聞いて、どうするんですか?」

伊藤「ご連絡くださった方がどの部署の、どういう方か明確でなければ、困ります」

海和「なぜですか」

伊藤「常識です。私自身住所氏名、すべて明らかにしています」

海和「広報課の海和です」

伊藤「フルネームでお願いします」

海和「それを聞いてどうするんですか。なんに使うんですか?」

伊藤「これといった意図はありません。一般社会のルールです」

こうしたやりとりの後、海和干城という固有名詞をようやくフルネームで聞き出すことができた。海和氏には連絡してきた誠実さを評価し、電話を切った。しかし、「イージス艦派遣要請問題」をあくまでも認めようとしない防衛庁の隠蔽体質に、これからどう立ち向かうのか、大きな課題を残すやりとりだった。
                         2002年6月2日記

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