「日本の戦争協力中止等を求める陳情」採択!
大田区議会陳情・最終レポート

                          <全交ニュース原稿>
     世界の平和と子どもの教育を考える大田実行委員会 代表 伊藤瀧子


先般(3月11日)、企画総務区民委員会で主旨採択されていた私たちの陳情、“大田区議会から日本政府へ「テロ根絶・アフガニスタンへの軍事行動及び、自衛隊の戦争加担」即時中止を求める意見書提出依頼に関する陳情”が3月26日午後1時より大田区議会本会議にかけられ、決議が諮られた。

 先ず最初に議長から、本陳情が委員会で主旨採択され、政府への「意見書」が議員提出「第2号議案」に纏められ、提案されるとの報告があり、委員長の「意見書」朗読に続き、起立採決で賛否が問われたが、圧倒的多数の賛成で採択された。(43対3とも 傍聴席からは確認できない)

 とはいうものの、「米・英両国に対する一切の戦闘行為の中止要請」及び、「自衛隊の海外派兵や戦争協力、後方支援の中止」等、陳情本来の主旨は盛り込まれておらず、「テロ根絶・アフガニスタンへの復興支援策及び、人道的救援活動の推進を求める意見書」という要旨で纏められており、委員会採択の「主旨を尊重する」という合意事項からいえば、納得できる内容ではなかった。

 しかし、これはやむを得ない状況だと言わざるを得ない。大田区議会は圧倒的多数の自民系与党政権。同系列の国政与党の政策に弓を引くような「意見書」など、上げられる道理がないからである。こうしたことは陳情の企画が持ち上がり、代表を要請された時から、予測していた。恐らく自民党議員にこの話を持ちかけても、一蹴されるに違いないと。ところが各会派への挨拶回りでの感触や、委員会決議等において、認識が変わった。もしかすると50%の確立で陳情成功かも?というように・・・。

 だが、状況はあくまでも流動的だった。3月20日に意見書の案文を3役に確かめるべく、(委員会終了後、約束を取り付けていた)ロビーイングを行った際、告げられたのは、「委員会採択を訝る声や、陳情の主旨を踏まえた内容に纏めようとすると、白紙撤回を求める声さえ挙がっている」とのこと。新政クラブなどはその典型で、「備えあれば憂いなし。丸裸で何ができる」「これまでの平和はアメリカに守られてきたからだ」「戦争協力は同盟国なら当たり前」と、弁じ立て、自説を曲げなかった。そういう過程で、委員長以下3役が、「これでは陳情書の主旨に副わない」と、非常に苦慮していた背景がある。その葛藤の証が、この本会議場で読み上げられた「意見書」の内容なのだ。残念というより、委員会の努力を評価すべきというのが、私の心情だった。

 こうした経緯において、いよいよ“陳情書”自体を吟味する「5号議案」が上程され、討論に入る。しかし、これが大変ドラマチックな展開を迎えることになった。演壇に立った自由党議員から採択反対の提案が出され、傍聴者の間には緊張が走る。議員は私たちが3月20日の再ロビーイングで全議員に渡したお願い文の文言を引き合いに出し、「この文面には、”委員会審議の際、自衛隊の扱いについてはよく吟味し、文案を纏めたいとの方向性で合意が得られましたが、どうぞ陳情者の心情をお汲み取り頂き、陳情の主旨が歪められたり、薄められたりすることのないよう、自衛隊の海外派兵、戦争協力、後方支援に反対の意見書をお上げくださいますよう、お取り計らい頂きたく”と書いてある。つまり、陳情の主眼はあくまでも“自衛隊の海外派兵、戦争協力、後方支援”に反対という点にある。たとえ主旨採択といえども、この陳情を採択することは、区議会がこの主張を認めたことになる。何ゆえに国政与党の自民党の議員諸兄が賛成するのか、理解に苦しむ」などと厳しい口調で反論した。

 与党議員としてはまさに面子丸潰れに等しい展開。意見書作成の舞台裏が図らずも本会議場で露呈されたわけである。と同時に、この反対討論により、私たちの陳情書の持つ意味合いが地方議会で扱うにはいかに難題、かつ難問であるのかということの証しにもなったのだ。今回の場合、各党・各議員の合意を得なければ上程できなかった意見書の要旨・内容に妥協が見られた点に頷く反面、恐らく「陳情書」の決議を諮る起立採決に悪影響が及ぶのは必至と危惧したにも関わらず、大方の予想を裏切り、自民党をはじめ、各党議員が勇気をもって冷静に対処し、圧倒的多数(上記参照)で可決された。

 これについて、ともに活動してきた仲間達は、こんな感想を「陳情ニュース」に載せている。

「議会としては、政府に”意見書”を提出することを第2号議案で採択した。そしてそれ以上に画期的だったのは「5号議案」である。この議案では私たちの陳情そのものについて検討し、区議会として承認採択したということだ。これにより、大田区議会は、あの陳情内容を区議会の意思とするということを、私たちは勝ち取ったのだ」 

 議会終了後、各会派に挨拶回りをしたとき、無所属の女性議員が駆け寄るようにして私の手を取り、こう言った。「伊藤さん。十分お役に立てなくてごめんなさい」。また、こんな言葉を掛けてくれる男性議員もいた。「大田区議会でこのような陳情が採択されるのは画期的なこと、最大の要因は陳情書の内容だ。これだけの文面に大事なことがすべて盛り込まれている。これが議員の心情に訴えた」。

 不可能と思えたことが可能になった。その最大の要因は陳情書の内容だといわれたことの意味合いは大きい。議会に提出された場合、提出者の要求は陳情書の中味が勝負、それ以上でもなければ、それ以下でもない。委員会で審議される場合、誤った解釈をされても、陳情者に補足や弁明の余地は与えられない。最大限の意思を伝えるため、今後大いに参考にしてほしい。

それと同時に、議員とのよい関係作りが欠かせない。私は議会に働き掛ける場合、請願は行わない。派閥の軋轢を生む可能性があるからだ。大会派・一人会派を問わず、派閥の責任者に会い、平等に話をする。さらに付け加えれば、要望事項を大上段に振りかぶらない。相手の立場や意見を尊重しながら共通点を探り、あくまでも超党派での採択を依頼する。そのスタンスを貫いてきた。

結論的に言って、今回の採択が大田区だからできたということではない。やり方次第で議会を動かすこともできるということを、私は声を大にして伝えたい。日本の右傾化を防ぐため、希望を持って、全国各地でさまざまな取り組みを進めてほしいと願っている。必要な時にはお互いに連帯しよう。

                                2002,3,31       

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