「何でいまさら…」
紅白歌合戦へ11年ぶりに復帰した昭和63年。復帰が決まったときの、ちあきなおみのコメントである。
欲のない人なのか、あまり過去や名誉に執着しないのか、とても不思議な感じがした。
当日は真っ赤なドレスを装って「紅とんぼ」を熱唱。ド演歌であり、決して好きなタイプの曲ではないのに
秘めた紅炎が静かに舞い散っているような幻覚に襲われるほど圧倒的な存在感、説得力であった。
ちあきなおみは91年10月アルバム「百花繚乱」を出して以来、レコーディングを行っていない。
翌年9月11日、夫の郷^治氏の逝去後、一切の芸能活動を停止。
その後も「黄昏のビギン」がCMに使われ話題に。6枚組CDBOX「ちあきなおみ・これくしょん ねえあんた」が発売日に
3000セットを完売、1万枚を超える売り上げとなり、この手の企画物としては異例の大ヒットとなる。
さらに、今年4月通信販売のみで発売された10枚組CDBOX「うたくらべ」も売れ行き好調という。
今なお,復活を望む声は後を絶たない。
2003年4月23日久々の"新譜"「VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家」が発売された。
未発表5曲を含むちあきなおみの仮想コンサート仕立てのライブアルバムである。
最新のリマスタリング方式でCD化されたとはいえ、ライブとは思えないほど安定した歌唱力、表現力。
何よりも歌手ちあきなおみの「引き出しの多さ」に感服した。
代表曲「喝采」は見事なピアノアレンジでよみがえっている。ジャズ、シャンソン、ポップス、演歌何でもありの構成。
下手な歌手がやるとただのまとまりのない曲の寄せ集めになる。ところが何を歌っても、「ちあきなおみ」ワールドに
昇華しているので全く違和感なくアルバムを通して聞くことができる。
うまい歌手が陥りがちな「私はこんなにうまいのよ〜」誇示 -意味なくビブラートを引き伸ばしてみたり、
不必要に声を張り上げてみたり- がまったくない。歌のもつ魅力を最大限に伝えるバランス感覚。
真似のできる人はおるまい。
運(ツキ)のない人
「ちあきなおみ」という名前をはじめて意識したのは、音楽雑誌オリコンの記事からである。
「ちあきなおみ 風の大地の子守唄」が発売中止に」
〜「ちあきなおみは映画「象物語」の主題歌をレコーディング。シングル発売の予定だったが
前のレコード会社が 「うちがクビにした歌手を使うなんてけしからん」とクレームをつけ、発売中止に。
シングル盤は黛ジュンによって再レコーディングされる予定。〜
結果はシングル盤は黛ジュン、映画の使用、およびサントラ盤はちあきバージョンの使用という
変則リリースとなった。
事実関係については諸説があり定かでない。
次は「矢切の渡し」がヒットしはじめたころ。「北酒場」が大ヒットしてレコード大賞を受賞、
波にのる細川たかしが 満を持しての新曲リリース。にもかかわらす、有線チャートでは
常にちあきなおみの「矢切りの渡し」のほうが順位が上。
どうしてもちあきなおみの「矢切の渡し」が聞きたくなり、有線放送のヒットチャートを紹介する
ラジオ番組に飛びついた。
圧倒的にこっちのほうが好み!まあ、歌は、歌い手が違えば別の曲と解釈すべきであり
どっちの方がいいか、なんてことを論ずるのはナンセンスかもしれぬ。
ただ、ちあきバージョンを聞くと、曲のもつ情景が見事に浮かんでくる。矢切の渡しにのって
駆け落ちするふたり、そのうしろめたさ、ほの暗さ…。なぜ有線でヒットしているのにレコードは
売れていないのか?ここで登場するのがまたしてもオリコン。
〜2年連続レコード大賞を狙う細川たかしサイドが、競作による"共倒れ"をおそれ、レコード会社が
同じであることを 利用して圧力をかけ、ちあきバージョンを廃盤に追い込んだ〜
事実関係※はかなり違うようだが、この記事の内容は不愉快だった。
その年のレコード大賞は思惑どおり細川たかしが2年連続受賞。個人的にはシラけまくりだった。
と同時に、前述の「象物語」の件もあり、「ちあきなおみって運のない人だな〜」という
漠然としたイメージが定着してしまった。
作曲者である船村徹氏のNHKの特集番組では、この曲は細川バージョンではなく
ちあきバージョンが放送される。
誰の意向なのかは定かでない。
※注 「矢切の渡し」は昭和51年「酒場川」のB面に収録された曲。(オリコン最高81位。1.5万枚)
完成度の高さからA面に、という声もあったようだが、ちあき本人の意向もあり結局B面に。
昭和57年、梅沢富美男主演のTVドラマに使われたことをきっかけに有線にリクエストが殺到。
すでに「酒場川」は廃盤になっていたため、急遽再リリースとなった。
しかし、いくらヒットしてもちあき自身はレコード会社を当時のコロンビアからビクターに移籍、
ジャズやシャンソンを集めた アルバム作りを中心とする歌手活動をしていたためこの曲を歌うことを拒んだ。
このままではせっかくの大ヒット曲が生まれる チャンスを逃してしまう、とあせるコロンビアに対して
細川たかしサイドが"この曲で今年は勝負したい"と申し出た。
ちあきの再発盤発売から4ヶ月後の出来事だった
〜「ちあきなおみ これくしょん 会田道人氏のライナーノーツより要約。
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